触媒についての解説
概要
当社では脱臭フィルターの製造、販売を行っています。脱臭フィルターと聞いてまず思い浮かべるのは、活性炭などの多孔質な材料を利用した吸着式フィルターではないでしょうか。しかし当社の製品の中には、吸着させるだけではなく、触媒による悪臭物質の分解促進機能を利用したものがあります。触媒を利用したフィルターは、吸着式のものと比べて長期間使用可能ということがメリットです。
まず触媒は、「化学反応においてそのもの自身は変化しないが、反応に必要なエネルギー(活性化エネルギー)を下げ、反応速度を速めるもの」として定義付けられています。以下は反応の進行における反応物質のエネルギーを示した模式図です。

触媒として金属である銅(Cu)を使用した、水の合成反応式を紹介します。
- ①Cu+1/2O2 → CuO (Cuが酸素と反応して酸化銅になる。)
- ②H2+CuO → H2O+Cu(酸化銅が水素と反応して水が合成され、酸化銅はもとの銅に戻る。)
このように触媒となるCuは一旦CuOになりますが、反応が完了するともとのCuに戻ります。
先ほど触媒自身は変化しないと説明しましたが、反応の途中では上記①式のCuOのような反応中間体になります。このような反応中間体を介すことで、より低いエネルギーで反応が進行し、活性化エネルギーを下げることができます。
身近な例ですと触媒は、自動車の排気ガスを分解する等、高温条件下で使用されるものがよく知られていますが、常温で使用できるものもあります。その中でも、光をあてることにより悪臭ガスの分解性能や抗菌性能を発揮する光触媒は、建材などに使用されることもあり、御存知の方も多いかと思います。その他にも常温で反応を促進させる触媒は多々ありますので、以下に一例をその反応機構を交えて紹介したいと思います。
触媒の紹介
①酸化触媒
酸化触媒とは、高い酸化力を持つ物質(主に金属)を原料として利用し、対象の化学物質を酸化分解するものになります。この触媒を使用した悪臭物質の分解、反応例としては、下記のようなものがあります。
- ・ホルムアルヒドを水と二酸化炭素に分解(HCHO + 1/2O2 → H2O + CO2)
- ・アセトアルデヒドを酢酸に変換(CH3CHO + 1/2O2 → CH3COOH)
- ・酢酸を水と二酸化炭素に分解(CH3COOH + 2O2 → 2H2O + 2CO2)
このように目的の悪臭ガスを酸化させることで、無害な物質にまで分解したり、同じ濃度であってもにおいを感じにくいガスに変換させ、臭気を低減させることが可能です。
②光触媒
光触媒とは、太陽光(紫外光)や蛍光灯の光(可視光)を吸収することで高い酸化力を持つ活性酸素を生成し、触媒表面に吸着した物質に対して酸化還元反応を起こします。光触媒としては酸化チタンを主原料としたものが一般的です。この触媒の特徴として、悪臭ガス以外にもウイルスや細菌に対する抗菌効果や、防カビ効果を有しており、昨今では抗菌製品のコーティング剤としても活用されています。以下に模式的に光触媒の作用を示しました。

③エチレン分解触媒
エチレン(CH2=CH2)は、野菜や花などの植物が成長を促すために自身から発生させる物質です。しかしエチレンの、植物の成長を促す効果は同時に、植物の腐敗を促進させることにも繋がります。野菜や花の鮮度を保つため、このエチレンという物質を塩化パラジウム触媒(PdCl2)にて、ワッカー反応を利用して分解する触媒が古くから使用されています。
ワッカー反応とは下記の反応式で示されるもので、塩化パラジウム触媒はこの一連の反応の中で最終的にもとの状態に戻っている(反応の前後でそのものの状態が変化していない)ことがわかります。
- ①C2H4+PdCl2 → Pd(C2H4)Cl2
- ②Pd(C2H4)Cl2+H2O → CH3CHO+2HCl+Pd
- ③Pd+2HCl+1/2O2 → PdCl2+H2O
活性炭ペレットに塩化パラジウムが担持された触媒のエチレン除去性能を、ボックス試験によって測定した結果を以下に示しました。

ボックス容量:11ℓ(※ファンで空気を循環)
フィルター:塩化パラジウム触媒
※活性炭ペレットに塩化パラジウムを担持
フィルター重量:5g
測定ガス:エチレン
初期濃度:10000ppm
温度:4℃


触媒被毒
触媒は反応機構を理解して適切に使用すれば非常に有用なものですが、生活環境にて脱臭用途に使うにあたっては、触媒被毒を考慮する必要があります。定義として、触媒は化学反応においてもそれ自身は変化しない、ということを先に挙げましたが、これはあくまで理想環境の中で使用した場合の話です。実際には、生活環境中で使用していると様々な要因で劣化し、脱臭性能が下がっていきます。この原因のひとつが触媒被毒と呼ばれるものです。
触媒は化学反応においてはそれ自身を変化させることはありませんが、生活環境で使用していると様々な物質が反応の過程で触媒表面に吸着し、触媒の反応の場を奪っていきます。これが触媒被毒です。
金属触媒の場合に反応性を低下させるものとしては、硫黄系のガス(硫化水素、メチルメルカプタンなど)を分解した際に発生するS(硫黄)や、食用油等に含まれるSi(シリコン)が有名です。こういった物質は触媒の表面に強力に吸着し、反応サイトをふさいでしまいます。
そのため金属触媒を含有する弊社脱臭フィルターは、こういった被毒物質の影響を考慮した上でお客様の要求を満たすよう設計しています。
また先に挙げたような被毒物質以外にも、高湿度環境下や水が染みてくるような環境で使用し続けた場合、触媒の表面が水で覆われることになり、被毒物質が吸着した際と同様に性能が低下します。生活環境中で使用する場合には、大気中に舞っている埃が表面に付着してしまうこともありますので、使用環境には注意が必要です。なお大気中の埃については、HEPAフィルターなどの除塵効果があるプレフィルターの使用で、脱臭フィルターへの付着を防ぐことができます。
当社製品の紹介
当社では主に、一般の生活環境や室温での使用を想定した脱臭フィルターの製造、販売を行っており、使用する触媒もそういった条件で効果を発揮するものを選んで活用しています。また用途によっては、数百度の高温下で使用可能なフィルターも御提供できます。
弊社触媒脱臭フィルターで除去可能な主な悪臭物質としては、有毒物質である硫化水素や、高濃度では人体に有害となるオゾンガス、他にも冷蔵庫の中に保管している食材、調理品から発生する複数の臭気ガスなどがあります。その他にも触媒の酸化作用を利用して、様々な悪臭物質を除去することが可能です。
お客様の使用条件や、除去対象となるガスをお知らせいただけましたら、御要望にお応えする最適な脱臭フィルターを設計し提案させていただきますので、お気軽にお問い合わせください。